2007年に岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーを修了後、2008年に株式会社インターナカツが主催する公募展「JEANSFACTORY ART AWARD 2008」にて、出品作《日常としての表象+作品後》が、審査員の森村泰昌氏、松本俊夫氏、宇川直宏氏らの高い評価を受け、グランプリM賞を受賞。これをきっかけにアーティスト/映像作家として活動を始める。

 その後、主な展覧会として、個展「さかいにはさま、る しんこうけい」(GALLERY TERRA TOKYO、東京、2012年)、企画展 「Art Court Frontier 2013」(ARTCOURT Gallery、大阪、2013年)、企画展「Kawaii」(CAMP Contemporary Art Meeting Point、アテネ、ギリシア、2013年)、Kenichi Sawazaki×Thomas Mailaender「Domestic Archaeology」(GALLERY TERRA TOKYO、東京、2013年)などで作品を発表し、2013年には映像作品《よしことしゃんらんがわたし》が公募展「Celeste Prize 2013」(ex-Bibli、ローマ・イタリア)のファイナリストに選出された。

 2015年には、スイスのシエールにあるアーティスト・イン・レジデンスThe Villa Ruffieuxにて、2ヶ月間の滞在制作を行い、その成果として個展「Linguistic Montage」(MAXXX – Project Space、シエール、スイス、2015年)を開催、翌年には企画展「フェスティバル・リルケ」(Fondation Rilke、シエール、スイス、2016年)に映像作品《夜がくりかえす》を出品した。

 2016年には、フランスの庭師ジル・クレマンの活動を記録した長編ドキュメンタリー映画『動いている庭』(85分、2016年)を監督。本作は、劇場公開映画として「第8回恵比寿映像祭」(恵比寿ガーデンシネマ、2016年)にて初公開され、その後も現在に至るまで立誠シネマ(京都、2017 年)、第七藝術劇場(大阪、2017 年)、神戸アートビレッジセンター(神戸、2018年2月)、池袋シネマ・ロサ(東京、2018年4月)で劇場公開、また、高知県立牧野植物園(高知、2017年)やアート・フェスティバル「Lieux Mouvants」(フランス、2017 年)など世界各地で多数上映された。

 映画『動いている庭』の制作をきっかけに、近年は、主にヨーロッパ・アジア・アフリカで、研究者や専⾨家たちのフィールド調査に同⾏し、彼らの視点を介して、多様な暮らしのあり⽅を記録した映像作品を制作。トヨタ財団の個人研究助成を受けた個人研究※1では、「暮らしの目線」からフィールド研究の感性を映像で記録することと、その記録した映像素材を基にして、学際的な研究の表現形を探求した(2017年5月〜2019年4月)。この個人研究の成果として、2018年4月に研究者たちと一般社団法人リビング・モンタージュを設立、代表理事に就任する。撮影した映像素材を活かすため、学際的活用の基盤となるプラットフォーム「暮らしのモンタージュ」を創設する。

 2018年4月には、個人研究の成果をより深く探求するために、京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程に進学し、3年間に渡る研鑽の後、博士号を取得した。このあいだ、2019年には、交換留学制度を利用し、英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の博士課程(School of Arts & Humanities)に約3ヶ月間滞在し、研究内容を深めた。博士論文の題目は、『暮らしのモンタージュ:フィールドの「余白」と〈あいだのまなざし〉から生まれる方法』(審査員:髙橋悟、石橋義正、佐藤知久、井上明彦、長谷正人(早稲田大学 教授))。

 博士課程の研究では、アジア・アフリカ各地でフィールド調査を行う人類学者や農学者らの協力のもと、彼ら研究者の活動を記録した映像制作を行い、彼らの主たる研究内容だけでなく、そこでこぼれ落ちてしまう「余白」的なものも含めて、映像メディアの使い方を工夫した独自の創造性を追求した。映像メディアの使い方を工夫し、独自に検討した「〈あいだのまなざし〉から生まれる方法」によって制作されたのが、『#まなざしのかたち』(124分、2021年制作)である。本作は、農学者・田中樹と文化人類学者・清水貴夫の調査地における様々な人間活動を記録した映像を基にし、あえてはっきりとした物語や主題にまとまらないような断片的なことがらとして編集した可変的な映像作品である。

 2021年6月には、関連する成果として、論考「暮らしのモンタージュ ―フィールド研究の余白―」と映像作品 #まなざしのかたち「雨上がり、水平的に、ストリートにて」が対話型学術誌『といとうとい 第0号』(京都大学学際融合教育研究推進センター, 2021年)に掲載された。

2021年9-10月には、京都グラフィのオフィシャル・セレクションとして、人類学者のふくだぺろ、アーティストのべ・サンスンと共に展覧会「語りあう/あわないイメージたち」(Tosei Kyoto Gallery、京都)を開催、イメージによるコミュニケーションをテーマとする写真/映像インスタレーションを発表した。

2021年11月と12月には、多重層的ドキュメンタリー映画『#まなざしのかたち』がsoco KyotoとTHEATRE E9 KYOTO、東京ドキュメンタリー映画祭(「長編コンペティション部門」選出)にて初公開された。


※1 澤崎賢一『「暮らしの目線」に見るフィールド研究の感性―映像メディアを活かす超学際研究の表現形の探究―』2017-2019年
https://toyotafound.secure.force.com/psearch/JoseiDetail?name=D16-R-0344