澤崎 賢一|SAWAZAKI Kenichi

1978年生まれ。アーティスト・映像作家・キュレーター・リサーチャー
総合地球環境学研究所 基盤研究部 特任助教
人間文化研究機構 人間文化研究創発センター研究員(兼任)
室蘭工業大学 客員准教授
一般社団法人リビング・モンタージュ理事
京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程修了 博士(美術)

【専門領域】芸術実践論
【研究キーワード】現代美術、ドキュメンタリー映画、マルチモーダル人類学、学際研究/超学際研究、科学技術社会論(STS)、環境人文学、庭、ムスリム
【連絡先】texsite1206(アットマーク)gmail.com
【CV】https://researchmap.jp/kenichi-sawazaki
【最近の活動について】https://note.com/texsite



 澤崎は、映像を中心とした現代美術をベースにしながら、新たな芸術文化パラダイム創造のために、積極的に異分野や異文化の人々と共同でプロジェクトを行っている。また、それらのプロジェクトの成果や効果を芸術実践と学術研究の両観点から検証・考察している。

■「映像芸術」を中心にした諸活動の根幹にある関心
 「ドキュメンタリーとは、現実を知り、その記録映像を徹底して見つめることによって、映画作家自らの世界観が問い直されることで生まれる「世界の新しい見方」である」(佐藤真『ドキュメンタリー映画の地平』2009, pp.16-17)
 このように「世界を新しい目で見るための独自の方法」を生み出すことに関心がある。そのために、学術研究や芸術・社会実践など、特定の領域に縛られず、両者を関係づけながら、それらを並行して実践している。

 彼が中心となり創設した学際的なプロジェクトとして、映像メディアの学際的活用の基盤となるプラットフォーム「暮らしのモンタージュ」共同研究プロジェクト「ヤングムスリムの窓:芸術と学問のクロスワーク」、共同研究プロジェクト「センサリー・ダイアローグ:アートとサイエンスの共創のための場の創出」、人間文化研究機構 共同研究プロジェクト「イマジナリー・ダイアローグ:映像・AI・芸術による参加型「問い」創出の学際的実践」などがある。それらのプロジェクトを進めるプロセスにおいて、彼はマルチモーダルなメディアを活かした仮説的な方法を自ら参画者と共に実践している。

 具体的な方法の事例として、〈メタ/コモンズ映画〉がある。〈メタ/コモンズ映画〉は、澤崎が開発した、知の生成プロセスにおいて様々な観点からコミュニケーションを交差・発展させるための映像を活かした方法論である。

〈メタ映画〉とは?
 映像を鑑賞したフィードバックをナレーションによって映像内にメタ的に入れ込んだ映像制作のことで、メタ的な視点からプロジェクトの参加者が映像制作工程を共に振り返りながら、調査研究プロセスにおける体験がもつ価値に新しい視座を与える。
 この手法を用いた作品に、多重層的ドキュメンタリー映画『#まなざしのかたち』(監督:澤崎賢一, 124分, 2021年, 国内外受賞多数)がある。この映画は、フィールド研究者のアフリカや東南アジアや日本各地での調査に澤崎が同行して記録した映像をもとに諸活動を行う学際的なプラットフォーム「暮らしのモンタージュ」の活動の一環で、「映像メディアと鑑賞体験の新たなモデル」を創出することを目的に制作されたものである。
 本作では、彼らフィールド研究者の調査現場における感性的な側面に着目し、映像芸術を活かしてそれらを可視化・顕在化させるための表現手法として、映像を見ることで感じたことを映画内にヴォイスオーバーとして挿入している。ここで明らかになったのは、学術研究の感性的な部分とイメージに関わる芸術表現がメタ的な視点において重なり合い、分野を横断した共創によって、双方にとっての気付きや学びの場が創出されたことである。

〈コモンズ映画〉とは?
 調査対象者を含め、プロジェクトの参加者全員がカメラで互いを撮影し合い、クラウド上にアップロードされた映像素材を共有資源=コモンズとして、各自の価値観や想いに基づき映像制作に取り組むことで、映像メディアを表現手段としてのみならず、一種のハブとして活用し、立場や専門、世代や文化的背景の異なるアクターが相互に関わり合う研究/共創の場が生み出される。
 当事者参加型のプロジェクト「ヤングムスリムの窓」では、この手法を用いた展覧会として、展覧会「ヤングムスリムの窓:撮られているのは、たしかにワタシだが、撮っているワタシはいったい誰だろう?」(企画・出品:澤崎賢一, 京都精華大学サテライトスペース, 2023年)を開催した。この展覧会では、「主体/客体」という枠組みから抜け出したパフォーマティブな関係性構築のために、研究者や被験者やステークホルダーなどの立場や世代、文化や宗教的背景、専門領域などをできるだけ前提としない他者同士の共創の場を生み出された。

 主な展示・作品に展覧会《見えん さかい目》(HIMOTOKUSABI、高知、2025)、展覧会「語りかける庭」(有斐斎 弘道館, 京都, 2025)、展覧会「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」(金沢21世紀美術館, 2024-25)、ドキュメンタリー映画『#まなざしのかたち ヤングムスリムの窓』(43分41秒, 2023, マダニ国際映画祭プレミア上映)、多重層的ドキュメンタリー映画『#まなざしのかたち』(124分, 2021, 東京ドキュメンタリー映画祭「長編コンペティション部門」選出)、劇場公開映画『動いている庭』(85分, 2016, 第8回恵比寿映像祭プレミア上映)など。

 その他、主な論文に、Kenichi Sawazaki, Kae Amo, Yo Nonaka et al. ”Emergent Use of Visual Media in Young Muslim Studies” TRAJECTORIA Vol.5, National Museum of Ethnology, Japan, 2024., 澤崎賢一「暮らしのモンタージュ―フィールド研究の余白―」(対話型学術誌『といとうとい』Vol.0,京都大学学際融合教育研究推進センター, 2021)、主な助成金に、トヨタ財団個人研究助成D16-R-0344「暮らしの目線」に見るフィールド研究の感性―映像メディアを活かす超学際研究の表現形の探究―」(2017-2019年度)など。